• HOME >
  • ワイヤレス給電 >
  • ワイヤレス給電の方式とは?磁界結合(電磁誘導)方式と磁界共鳴方式の違い - Technology Geeks(株式会社ダイヘン)
豆知識 / 基礎知識

ワイヤレス給電の方式とは?磁界結合(電磁誘導)方式と磁界共鳴方式の違い

Summary
  • ワイヤレス給電は放射型と結合型の2種類、さらに複数の方式に細分化される。
  • 磁界結合方式は、近距離で良位置の給電に向いており多数の商品で実用化されている。
  • 磁界共鳴方式は、位置ズレにも強いためEVの充電方法のひとつとして期待されている。

ケーブルなしに機器を装置に近づけるだけで充電できる「ワイヤレス給電」。
スマートフォンなどにも活用されるようになったことで、現在大きな注目を集めています。
給電/充電のたびにケーブルにつなぐ必要がなくなるため、非常に便利な機能です。
でも、なぜ装置に近づけるだけで給電できるのか不思議ではありませんか?
今回は、ワイヤレス給電の原理と方式について分かりやすく解説します。

1.ワイヤレス給電方式にはどんな種類がある?

ワイヤレス給電方式は大きく「放射型」と「結合型(非放射型)」の2つの方式に分けられます。
「放射型」は長距離の電力伝送に適しており、レーザー光線などの光を用いた方式やマイクロ波などの電波を用いた方式があります。
しかし、今の技術ではエネルギーロスが大きく、電力伝送の効率アップが難しいため、研究段階にとどまっているのが現状です。
一方「結合型」とは、近い範囲での電力伝送を効率的に行える給電方式。
結合型はさらに、電力伝送の媒体に磁界を用いる「磁界結合(電磁誘導)方式」と、電界を用いる「電界結合方式」の2種類に分類されます。

「磁界結合(電磁誘導)方式」は、古くから変圧器などで使用されている電磁誘導の原理を電力伝送に使ったもの。金属接点(電極)の露出がなく安全なため、電動歯ブラシや電動シェーバーなど、すでに身の回りの様々な機器で実用化されている方式です。

「磁界結合(電磁誘導)方式」の中でも、送受電に用いるコイルを「共振(共鳴)状態」とすることで効率を上げ、コイル間の位置の自由度を高める工夫がなされている技術を「磁界共鳴方式」と言います。従来の磁界結合(電磁誘導)方式よりも伝送距離が長く利便性に優れることから、現在特に注目され、開発が進められている技術です。

 

2.磁界結合(電磁誘導)方式と磁界共鳴方式の原理と特長

なぜ、ワイヤレス給電はケーブルにつながなくても給電できるのでしょうか?
磁界結合(電磁誘導)方式と磁界共鳴方式を例に、その原理と特長を見ていきましょう。

磁界結合(電磁誘導)方式

磁界結合(電磁誘導)方式は、電磁誘導の原理を用いて給電する方式のこと。
2つのコイルを接近させて一方のコイルに電流を流すと、コイルを貫くように発生する磁束を媒介にして、もう一方のコイルにも起電力が生まれるという現象を活用し、ケーブルにつながなくても給電できる仕組みとなっています。
数cm程度の近距離での電力伝送に適しているので、金属電極の接触がなくても、決まった距離では電気を送ることが可能です。

現在実用化されているワイヤレス給電製品のほとんどは、磁界結合(電磁誘導)方式が用いられています。
電動歯ブラシや電動シェーバーがその代表例。充電時にはケーブルに接続する必要がなく、ケースなどに固定した状態で乗せるだけで手軽に充電することができます。
特に、水回りで使う製品によく使用されているのも大きな特長です。金属製の接点をなくすことで防水性が高まり、水回りに設置してもショートする危険が少ないので、安全に利用できるためです。
また、最近注目を集めているスマートフォンなどの「おくだけ充電」も、磁界結合(電磁誘導)方式が用いられています。

磁界共鳴方式

磁界共鳴方式は、2つのコイルを「共振器」として利用します。
共振とは、同じ周波数で振動する2つのものを近づけて置き、一方を振動させるともう一方も勝手に振動しはじめる現象のこと。学校の音楽室によくある音叉の実験でも有名ですよね。
磁界共鳴とは、一方のコイルとある周波数に電流が流れることで発生した磁場の振動が、同じ周波数でもう一方のコイルに伝わる現象です。電磁誘導の原理を基に、電流が流れる仕組みとなっています。

2007年にマサチューセッツ工科大学が、約2m離れた位置に置いた60Wの電球にワイヤレスで電力を送り、点灯させることを実証結果として発表。
従来の磁界結合(電磁誘導)方式と比較して伝送可能距離が長く、数mの距離でも給電を可能にするという強みがあります。
このような特長があるため、電気自動車の充電方式として実用化・標準化されることが期待されています。ある程度距離があっても伝送が可能で、コイル間の位置合わせの自由度が高いので、車種(車高)を選ばず、駐車時に位置ズレがおきても安定した充電が可能となります。

共鳴による磁場結合が発生する一連の過程については、下記の図をご覧ください。

▼磁場共鳴のしくみ

ワイヤレス給電と一口に言っても、いくつかの方式が存在し、給電するモノや環境に応じた技術が採用されていることがお分かりいただけたでしょうか?ワイヤレス給電の実用化は今後ますます進み、私たちの生活をより便利なものへと進化させてくれるでしょう。

Products of DAIHEN

AGV(無人搬送台車)用ワイヤレス給電システム

AGVの24時間連続稼働を実現し、工場の生産性をUP!
スリムタイプがラインナップに加わり、小型のAGVにも対応

EV(電気自動車)向けワイヤレス充電システム

世界で初めて最大11kWの大容量での急速充電を可能とするワイヤレス充電
高効率で急速かつ安定した充電を実現(電力伝送実証試験用)

#ワイヤレス給電#基礎知識#エレクトロニクス#電気自動車

関連記事

ランキング

Technology Geeksについて              

「Technology Geeks(テクノロジーギークス)」とは、株式会社ダイヘンが運営する幅広い技術テーマを紹介する情報発信サイトです。
学術として関わる人から、企業内で技術開発に取り組む人、施設や設備を管理する人まで、この分野に携わる人達にとって“分かりやすい・役に立つ・学べる” をモットーに情報をお届けします。

Geeks LV(ギークスレベル)について

各記事に付けられたGeeksLVは掲載情報の“専門度”を示すアイコンです。
レベルが高くなるにつれ、よりコアな情報が掲載されています。