• HOME >
  • 変圧器 >
  • 電気設備管理者必読─押さえておきたい変圧器のメンテナンス - Technology Geeks(株式会社ダイヘン)
豆知識 / 基礎知識

電気設備管理者必読─押さえておきたい変圧器のメンテナンス

変圧器のメンテナンス_アイキャッチ
Summary
  • 変圧器を計画的にメンテナンスすることで、長期間安定的な運用につながる。
  • 日常点検では目視や音・臭いなどの五感を使ったチェックを行う。
  • 定期点検では無電圧(運転停止)状態で普段確認できない通電部分のチェックを行う。

発電所で作られた高圧の電気を、家庭やビルでも使える電気に変換するための変圧器。
一般的に変圧器の寿命は20~30年程度といわれていますが、長期間安定的に運用するためには、計画的に正しいメンテナンスを行うことが大切です。
ここでは、変圧器のメンテナンス方法について分かりやすく紹介します。

1.変圧器には計画的なメンテナンスが大切

変圧器の寿命は一般的に20~30年程度と言われていますが、長年にわたって使用すると部材の汚損や劣化などが発生する可能性があります。
結果として、設備停止や工場の生産ライン停止といったトラブルに繋がることもあります。こうしたトラブルを未然に防ぎ、長期間安定的に運用するためにも、計画的な設備の更新や変圧器のメンテナンスを行うことが大切です。

変圧器の点検方法には、ユーザーが稼働中に目視などで確認する「日常点検」と、運転を停止して詳細に確認する「定期点検」などがあります。それぞれの点検方法を、油入変圧器と乾式変圧器に分けてご紹介します。

2.変圧器の日常点検

変圧器の設備使用者や管理者が、目視等「五感」によって日々点検するのが「日常点検」。見た目、温度、音、臭いなど変圧器の近くに行けば察知できる内容がほとんどです。日常点検で察知したいつもと違う音や臭いなどの原因が不明確な場合は、早急にメーカーに相談しましょう。
主なチェック項目は以下になります。

運転状態

変圧器が接続されている電力系統の電圧計や周波数計などの各種計器類を監視して、異常な値になっていないかをチェックします。
この場合、異常の原因は変圧器そのものではなく、変圧器よりも寿命が短い計器類の故障である可能性が高いため、計器類の修理・交換をメーカーに相談する必要があります。

外観点検

電線を接続する端子部が、加熱などによって変色していないか、締付部が緩んでいないか、端子表面が錆びていないか、金属などの異物がついていないか、などを目視で確認します。
異常が見られた場合は、至急メーカーに相談する必要があります。

変圧器温度

ダイヤル温度計や油面温度計を確認します。
ダイヤル温度計は警報設定値になった場合、アラームが鳴るようになっているのが通常です。警報設定値は「周囲温度+油の温度上昇」の合計値で判断され、例えば温度上昇限度が60Kの場合、冬場において、外気温が10℃で温度計が90℃を示していると温度上昇は80Kとなり、これは規定の60Kを超えていることのアラームが鳴ります。

実際の現場では、設置場所や季節によって周囲温度が異なり、油の温度上昇にもばらつきがあるため、状況に応じて設定値を決めることになります。温度計の不調でないにも関わらず温度の異常が見られる場合には、規格値以上の負荷がかかっているかもしれませんので、負荷の低減をする必要があります。

変圧器は運転中に「ブーン」と、低い音が鳴っています。この音は周波数の低下や受電電圧の上昇、変圧器の設定電圧以上の電圧がかかってしまうことなどで音が大きくなり、これもチェック項目の1つです。
この場合は電気管理者へ連絡し、変圧器の変圧比を変えるタップ切換等によって調整してもらいます。

臭気

通常時では発生しない臭いが発生している場合は、過負荷による温度上昇熱などが主な原因です。油や巻線内の絶縁物が過熱したことにより発生していると考えられますので、早急にメーカーに相談する必要があります。他に端子部のゆるみなどの接触不良も考えられます。また、油入式変圧器は絶縁油が漏れていないか、油劣化防止装置の呼吸口なども合わせて点検します。

ご紹介した内容は点検項目の一部となりますので、詳しくは下表を参照ください。なお、点検項目の一部については変圧器を停止した状態で行う必要がありますので、十分に注意が必要です。

 

▼日常点検項目(油入変圧器)

点検項目 点検の要点 異常発見時の判定及び対策
内容 原因 対策
運転状態 電圧、電流、周波数、
力率、周囲温度の
確認又は記録
異常値指示 計器故障 修理又は交換
その他 原因の究明と 対策の実施
変圧器温度 温度の確認及び記録 異常温度上昇 計器不良 修理又は交換
過負荷 負荷の低減、相間の
不平衡の均等化及び
容量の増加
巻線内部異常 原因の究明と
対策の実施
その他 原因の究明と
対策の実施
音・振動 異常音発生の有無 高い鉄心(励磁)音 過電圧 適切なタップに切換
サイリスタなどを
用いた負荷機器
負荷機器側での対策
振動及び共振音 設置の不安定 安定設置
共振 共振条件の除去
鉄心びびり音 原因の究明と
対策の実施
放電音 接地不完全 接地工事を完全に行う
部分放電発生 原因の究明と
対策の実施
その他 原因の究明と
対策の実施
臭気 臭気発生の有無 異常温度上昇 局部加熱 原因の究明と
対策の実施
絶縁油 油漏れの有無 シール不良 ガスケット劣化 ガスケット交換
緩み 増締め
油面位置の確認 異常値指示 計器の故障
油漏れ
修理又は交換
油劣化防止装置 吸湿呼吸器又は 呼吸口の点検 吸湿剤(シリカゲル)
変色
吸湿 吸湿剤(シリカゲル)
再処理又は交換
油つぼの油不足 油追加
油の変色 油の劣化 油の交換
呼吸動作の確認 パイプの詰まり 清掃
外観点検 端子部異常の有無 加熱による変色 過負荷又は異常電流 負荷の低減
締結部の緩み 増締め
接触面の不良 原因の究明と
対策の実施
がい管の目視 汚損、破損 清掃、交換
部品などの破損及び
脱落の有無
修理又は交換
放電痕の有無 異常電圧の侵入又は発生 原因の究明と
対策の実施
初錆の有無 塗膜の劣化 特定の塗料で補修
小動物形跡の有無 原因の究明と
対策の実施
※点検について/JEM-TR 171引用

 

▼日常点検項目(乾式変圧器)

点検項目 点検の要点 異常発見時の判定及び対策
内容 原因 対策
運転状態 電圧、電流、周波数、
力率、周囲温度の
確認又は記録
異常値指示 計器故障 修理又は交換
その他 原因の究明と
対策の実施
変圧器温度 温度の確認及び記録 異常温度上昇 計器不良 修理又は交換
過負荷 負荷の低減、相間の
不平衡の均等化及び
容量の増加
巻線内部異常 原因の究明と
対策の実施
その他 原因の究明と
対策の実施
音・振動 異常音発生の有無 高い鉄心(励磁)音 過電圧 適切なタップに切換
サイリスタなどを
用いた負荷機器
負荷機器側での対策
振動及び共振音 設置の不安定 安定設置
共振 共振条件の除去
鉄心びびり音 ボルト・ナットの緩み 増締め・珪素鋼板の溶着
放電音 接地不完全 接地工事を完全に行う
コロナの発生 原因の究明と
対策の実施
その他 原因の究明と
対策の実施
臭気 臭気発生の有無 異常温度上昇 過負荷 負荷の低減
局部加熱・巻線内部異常 原因の究明と
対策の実施
外観点検 端子部、タップ切換
装置の異常の有無
加熱による変色 過負荷又は異常電流 負荷の低減
締結部の緩み 増締め
接触面の不良 研磨、再メッキ
鉄心・コイルなどの外観 じんあい(塵埃)の
付着・汚損
じんあいの除去
樹脂のクラック・欠け
(モールド変圧器の
場合)
原因の究明と
対策の実施
部品などの破損及び
脱落の有無
修理又は交換
放電痕の有無 絶縁物の炭化 異常電圧の侵入又は発生 原因の究明と
対策の実施
初錆の有無 雨水、水滴の付着 水分侵入の
防止・再塗装
腐食の有無 特殊ガスの存在 ガス侵入の防止

3.変圧器の定期点検

変圧器を停止した無電圧状態で、日常点検では確認できない通電部分を中心に確認するのが「定期点検」です。油入式、乾式それぞれの点検項目と共通の点検項目は以下のとおりです。

油入式の点検項目

絶縁油や油劣化防止装置、油面計などを確認します。特に絶縁油は使用する内に変色し、冷却効果が低下することがあります。絶縁油を採取して分析し、交換の必要がないかを確認します。

乾式の点検項目

鉄心、巻線支持物や各種締付部などの外観を中心に確認します。外観(モールドコイル)にクラック(ヒビ、割れ、欠け)がないかどうか、変圧器の近くで目視による点検を行います。クラックがあった場合は至急メーカーに相談します。場合によっては変圧器の交換が必要となります。

油入式、乾式共通の点検項目

巻線やタップ切換装置、端子部、温度計などを確認します。汚損や劣化が生じていないか、電気が流れてはいけない場所に流れてしまっていないか(絶縁抵抗測定)を確認します。

ご紹介した内容は点検項目の一部となりますので、詳しくは下表を参照ください。

 

▼定期点検項目(油入式変圧器)

点検項目 点検の要点 異常発見時の判定及び対策
内容 原因 対策
巻線 絶縁抵抗測定 絶縁油、絶縁物の
吸湿、劣化
絶縁油のろ過又は交換、
ブッシングの清掃
誘電正接測定
絶縁油 破壊電圧測定 吸湿、劣化 ろ過又は交換
油中ガス分析 変圧器内部
異常など
原因の究明と対策の実施
酸価測定 絶縁油劣化 交換
その他一般特性 ろ過又は交換
タップ切換装置 切換操作 動作不良 故障 修理又は交換
緩みの点検 接続部緩み
ハンドホール気密不良 ガスケット劣化、
緩み
ガスケット交換、増締め
油劣化防止装置 シール部点検 シール不良 ガスケット劣化、
緩み
ガスケット交換、増締め
吸湿呼吸器又は
呼吸口の点検
吸湿剤(シリカゲル)
変色
吸湿 吸湿剤(シリカゲル)
再処理又は交換
油つぼの油不足 油追加
油の変色 油の劣化 油の交換
呼吸動作の確認 パイプの詰まり 清掃
タンク・放熱器 油漏れ及び発錆の有無 発錆、腐食 塗膜の劣化 指定の塗料で補修
有毒ガスの存在 ガス侵入の防止
塩分の付着 耐塩処理の強化
シール不良 ガスケット劣化、
緩み
ガスケット交換、増締め
ブッシング 目視による異常の有無 端子部の過熱による変色 過負荷又は異常電流 負荷の低減
締付部の緩み 増締め
接触面の不良 原因の究明と対策の実施
がい管の汚損、破損 清掃、交換
温度計 指示及び動作確認 不良 故障 修理又は交換
油面計 目視検査 油面異常 油漏れによる低下 原因の究明と対策の実施
故障 修理又は交換

 

▼定期点検項目(乾式変圧器)

点検項目 点検の要点 異常発見時の判定及び対策
内容 原因 対策
巻線絶縁物 汚損の有無 じんあい(塵埃)の
付着
乾燥した圧縮空気(1.0kg/cm程度)を
吹き付けるか、真空清掃機で清掃する
劣化の有無  絶縁物の
変色・亀裂
局部加熱 劣化の著しい場合は
メーカーと協議し処理する
経年劣化
 放電痕、
カーボン付着
異常電圧の侵入
または発生
原因の究明と対策の実施
 その他
絶縁抵抗測定 「絶縁抵抗の
判定基準」の
値以下
吸湿 乾燥処理をする
汚損 清掃する
その他 熱劣化の激しいときは、メーカーに
連絡をとり適切な処理をする
鉄心 汚損、その他
異常の有無
じんあい
(塵埃)の
付着
乾燥した圧縮空気(1.0kg/cm程度)を
吹き付けるか、真空清掃機で清掃する
巻線絶縁物表面に傷をつけないよう留意し、
ベンジンなどの溶剤は使用しないこと
発錆腐食 防錆材料の劣化 所定の塗料で補修
有毒ガスの存在 ガス侵入の防止
雨水・水分
の付着、
結露
建屋の防水処理
または室内の相対湿度の低減
 その他 原因の究明と対策の実施
口出し先、
タップ切換
装置その他
誘電部
締付箇所
異常の有無
加熱による変色 過負荷 負荷の低減
緩み 増締め
接触面不良 研磨、再メッキ
発錆 原因の究明と対策の実施
その他
巻線支持物 異常の有無 緩み ボルト・ナットの
緩み
増締め
スペーサの
ずれ
絶縁物熱劣化 巻線補修を要する場合、
メーカーと相談し処理する
その他 原因を究明と対策の実施
温度計など
計測器、
保護装置
指示、動作確認 不良 故障 取換または修理

 

変圧器を長期的かつ安定的に使用するためには、計画的なメンテナンスが必要不可欠です。大きな故障やトラブルを未然に防ぐ上でも、日常点検と定期点検を必ず行いましょう。

Products of DAIHEN

トップランナー油入変圧器

確かなエネルギーコントロール技術により創造性に富んだ次世代のエネルギー社会を構築します。

トップランナーモールド変圧器

難燃性で防災性に優れ、公共施設、高層ビル、病院などに最適
コンパクト設計でシンプルかつすっきりとしたデザイン

#基礎知識#エレクトロニクス#産業電機#変圧器

関連記事

ランキング

Technology Geeksについて              

「Technology Geeks(テクノロジーギークス)」とは、株式会社ダイヘンが運営する幅広い技術テーマを紹介する情報発信サイトです。
学術として関わる人から、企業内で技術開発に取り組む人、施設や設備を管理する人まで、この分野に携わる人達にとって“分かりやすい・役に立つ・学べる” をモットーに情報をお届けします。

Geeks LV(ギークスレベル)について

各記事に付けられたGeeksLVは掲載情報の“専門度”を示すアイコンです。
レベルが高くなるにつれ、よりコアな情報が掲載されています。