AGVにワイヤレス充電を導入するメリットとは？

工場や倉庫の業務効率化のために、広く活用されているAGV（無人搬送台車）。
AGVを充電する場合、バッテリーを取り外して充電器に接続する方法が一般的ですが、昨今注目を集めているのが「ワイヤレス充電」です。
今回は、AGVの充電方式やワイヤレス充電を導入するメリットを紹介いたします。

1.AGV（無人搬送台車）とは？

AGV（Automatic Guided Vehicle）とは、無人搬送台車のこと。
人が運転操作を行わなくても自動で走行する搬送用車両で、自動車業界や物流業界などにおける原材料・部品・完成品の搬送のために用いられています。
工場や倉庫の自動化（ファクトリーオートメーション/FA）を実現し、昨今の業務効率化や人手不足といった課題を解決するための重要な役割を担っているのです。

最も広く採用されているのが、磁気誘導方式のAGV。
床面に磁気テープを貼り、磁気テープが発する磁気を検知してAGVを誘導する仕組みで、AGVは磁気テープのルートに沿って自動で走行・停止を行います。磁気テープを貼り変えるだけで簡単に走行ルートを変更できるので、工場のレイアウト変更がフレキシブルに行える点が大きなメリットと言えるでしょう。
近年では、磁気テープよりも柔軟にルート設定や変更が行える、磁気テープを使用しないガイドレスタイプのAGVも開発されています。

そして円滑な運用のために重要な役割を担っているのが、AGVに搭載される「バッテリー」。
一般の自動車用とは異なる深い放電の繰り返しにも適した大容量のバッテリーが必要になり、鉛蓄電池やリチウムイオン電池が使用されることが一般的です。

AGVで搬送を自動化することにより、多くの工場や倉庫で劇的に作業効率が改善。人的コストを大きく削減することができます。
しかし一方で、バッテリーの充電作業や交換作業では人の手が必要になってしまうことが課題として残っていました。そこで近年、AGVでの搬送を完全自動化するために、無人で充電することに注目が集まっています。

2.AGVの充電方式は3種類

AGVに搭載されるバッテリーの充電方式・方法には、次の3種類があります。

①有線充電器を用いた充電

現時点で最も採用されている方式です。
AGVに搭載されているバッテリーを取り外し、外部に設置された充電器に接続して充電します。

AGVを連続して稼働させる場合はあらかじめ予備バッテリーを充電して、都度バッテリーを交換する必要があります。
また、一般的に産業用で使用されるバッテリーは数十キログラムもあるためバッテリー交換は重作業となり、このため、バッテリーの落下による事故や感電に注意しなければなりません。

②接触式自動充電器を用いた充電

任意に設定したAGVの停止位置で、自動で電極をバッテリー端子に押し付けて充電を行う方式です。家庭用のロボット掃除機を思い出してもらうとイメージしやすいのではないでしょうか。自動で充電できるため人が充電作業に携わらなくてよく、大きく工数を削減できます。

一方で、電極をバッテリー端子に押し付ける可動部が劣化しやすく、定期的なメンテナンスが必要になります。
また、電極が接触する際に生じるスパークによる発火対策など、安全面への配慮が欠かせません。
さらに、充電を行うためのAGV停止位置が少しでもズレてしまうと、接触不良により充電エラーとなってしまうので、人によるチェックも求められます。

③ワイヤレス給電システムを用いた自動充電

任意に設定したAGVの停止位置で、ケーブルや金属接点と接触させずに充電するのがこの方式です。
また、金属接点がないため感電のリスクがなく、安全性も非常に高いのが特長です。可動部もないことから、メンテナンスフリーでの運用も可能となります。

3.ワイヤレス充電方式を導入するメリット

昨今注目を集めるワイヤレス充電方式には、導入メリットが多数あります。
まずひとつは、荷物の積み下ろし作業を行うためにAGVが停止している時間を利用して自動で充電ができるため、待機時間を効率的に活用することが可能な点。
人による充電作業から解放されるので、人的コストの削減にもつながり、生産性の向上も実現できます。
もうひとつは、先にも述べましたが金属接点がないためスパークや感電による事故の危険性が低い点。
さらに、送電側機器の移設が簡単なため、工場のレイアウト変更にも柔軟に対応できます。

工場や倉庫の無人化、ファクトリーオートメーション（FA）に向けた動きが急速に進んでいる中、生産性向上を図るためにAGVの導入は重要なポイントと言えます。ワイヤレス充電は、業務の効率化や安全面・メンテナンスフリーなど多大なメリットを生み出す技術なのです。