発電した電気はどう流れる?送電のしくみと電圧の種類を解説
- 発電所で作られる電気は送電時に発生するロスを抑えるため、高い電圧で送電される。
- 電気は各施設で使用できる電圧にまで、段階的に引き下げられる。
- 2万2000~27万5000Vを特別高圧電力、6600Vを高圧電力、200V以下を低圧電力と呼ぶ。
普段何気なく使っている電気製品。パソコンの電源を入れればすぐに起動しますし、テレビだっていつでも見ることができますよね。
これは、発電所で作られた電気が送電線(発電所−変電所などを経由する線)や配電線(変電所(変圧器)から各家庭へ電気を配る線)を伝って、家庭やビル、工場に休むことなく届けられているから実現できています。
しかも、ただ一定の電気を届けているだけではありません。電気をたくさん使う工場や一般的な家庭など、場所や用途に応じた電気を届けるために、適切に電圧を調整しながら送電しているのです。
ここでは、電気がどのような経路でどのように電圧を変えながら発電所から消費者に届けられているかを解説します。
1.送電に関係する設備・施設は何がある?
電気は発電所で作られた後、様々な施設や設備・機器を通して、家庭やビルでも使える電気へと変換されています。
まずは、送電に関わる施設や設備について見ていきましょう。
発電所
発電所は、電気以外のエネルギーを電気エネルギーに変換して生み出す施設のこと。いわば、電気のスタート地点。
エネルギー源によって火力、水力、原子力発電所に分類され、最近では、再生可能エネルギーを使った風力、地熱、太陽光発電所も普及しています。様々な方法で発電することによって、何かの燃料が使用できなくなった際のリスクを、他の燃料でカバーできるようになっているのです。
超高圧変電所
変電所とは、発電所で作られた電気の電圧や周波数を変える施設のこと。
電気を少ないロスで効率的に届けるために電圧をコントロールし、電気の行き先を振り分ける役割も担っています。変電所は、電圧を調整する巨大な変圧器や、電気の行き先を決めるスイッチとなる遮断器などで構成されており、電気を集中・分配することで停電のリスクを抑えています。
中でも超高圧変電所は、発電所から最初に電気が送られてくる変電所になります。この超高圧変電所から一次・二次変電所へと徐々に電圧を引き下げて、使用施設に応じた使いやすい電圧へと変換されていきます。なお、超高圧変電所、一次・二次変電所は、送電線を通じて電圧を変換する「送電用変電所」と言われます。
配電用変電所
送電用変電所から送られてきた高い電圧の電気を、低い電圧に変換して、地域の配電線に供給するのが配電用変電所です。
送電用変電所に比べて通過する電力が小さい分、施設規模も小さいですが、送電用変電所よりも圧倒的に数は多く、私たちにとって最も身近な変電所と言えるでしょう。
変圧器(トランス)
電柱の上部に設置されている灰色の円筒型の設備のことを柱上変圧器 といいます。皆さまも、電柱を見上げた時に灰色の設備を見たことがあるのではないでしょうか?
これは、配電用変電所から送られてきた高電圧の電気を、一般家庭用に100Vまたは200Vまで電圧を引き下げるために使われています。
もちろん電柱以外にも工場やビルといった、商業施設の電気室や屋上などの身近なところに変圧器は設置され、適切な電圧に変換されます。
以上のように、発電所で作られた電気は変電所を通して徐々に電圧を下げながら、私たちが使える電気となって届けられているのです。
2.送電の仕組みと電圧の種類
では、各施設では電気がどのように変換されながら送電されているのでしょうか?具体的に解説していきましょう。
まず、発電所で作られた電気は27万5000V~50万Vという非常に高い電圧まで昇圧されて、送電線へ送り出されます。
なぜ送り出すときに電圧を高くするのかというと、送電線の抵抗によって電気の一部が無駄になってしまうため、できる限りロスを少なくするために必要な手立てだからです。送電時のロスが少なくなれば、長距離の区間でも効率的に送電することが可能になります。
発電所から送られてきた電気は、各地に設けられた超高圧変電所で15万4000Vに変換。その後、一次変電所で6万6000Vまで引き下げられます。
この時点で、一部は大量の電気を使用する鉄道会社や大規模工場に届けられ、各企業内に設置されてある変電設備で使える電圧に変換されます。
残りの電気は二次変電所に送られて、さらに2万2000Vまで引き下げられます。
ここでも、電気の一部は大規模工場やコンビナートなどに届けられています。
そして、2万2000Vに変電された残りの電気は配電用変電所の元へ。6600Vまで引き下げられ、大規模なビルや中規模工場などへと配電されます。
6600Vの電気は、街中の電線にも配電されています。この電気を、電柱の上に設置されてある柱上変圧器が100Vまたは200Vに電気を変圧し、引き込み線から各家庭へと届けられます。
発電所で作られた電気は、超高圧変電所や配電用変電所などたくさんの施設を通じて、電力を少しでも無駄にしない工夫によって私たちの元に届いていることが分かっていただけたかと思います。