変圧器とは?原理や構造をわかりやすく解説
- 変圧器とは電気を利用に応じた電圧に変えるための機器。
- 変圧器は鉄心(コア)に1次コイルと2次コイルを巻き付けた構造。
- 熱の冷却方法や配線方法によって様々な種類に分類される。
- 入力側のコイルの巻数によって電圧を自由に変えられる仕組み。
変圧器(トランス)とは、電圧を変える(=変圧する)ための機器のこと。
身近なところでは電圧の異なる海外で日本の電化製品を使うための旅行用変圧器や、電柱の上にあるバケツ型の設備というとお分かりの方も多いのではないでしょうか?
この変圧器、発電所からの電気の供給、各家庭やビル等で電気を利用するために必要不可欠なものなのです。
ここでは「変圧器」の役割や原理、構造などについて分かりやすく解説します。
1.なぜ変圧器が必要なの?変圧器の役割とは
発電所で作られた電気は、電線を通して各家庭やビルに届けられます。
しかし、発電所で作られた電気は高い電圧であるため、そのまま家庭やビルで使うことはできません。
そこで、出番になるのが「変圧器」。
電気をたくさん使うビルや工場には6600V以上の高い電圧(=高圧)、一般家庭には100Vの低い電圧(=低圧)といったように、各施設の負荷に合わせて、変圧器で電圧を変えることで、安全に電気を使用することができるようになります。
でも、変圧器で電圧を変えるくらいなら、最初から各施設で使える電圧で供給すればいいのでは?と思いますよね。
これには、作った電気を無駄にしないための理由が隠されているのです。
発電所で作った電気を送る送電線には「抵抗」があります。
抵抗があると、電気の一部が熱となって空中に逃げてしまい、発電した電気に損失(ロス)が発生してしまいます。(送電損失)
この「送電損失」を少なくするためには、ある工夫をしなければなりません。
少し専門的な話になりますが、「送電損失は電流の2乗に比例する」という法則があります。
そのため、電流はできる限り低く抑える必要があるんですね。
そこで、高圧で送電して電流を低く抑えることで、送電損失を最小限に食い止めているのです。
このように、電気を無駄にせず各施設に届けるため、施設ごとに調整できる「変圧器」が必要不可欠、という訳です。
ちなみに、変圧器は電圧の高さによって「超高圧変圧器(11万V以上)」「特高変圧器(2万V~11万V)」「高圧変圧器(6,600V~2万V)」に分類されるので、併せて押さえておきましょう。
2.変圧器ってどんな構造?種類も色々
電気を使うために欠かせない変圧器ですが、構造は極めてシンプルです。
鉄心(コア)に1次コイルと2次コイルを巻き付けたもので、鉄心とコイルの位置関係によって「内鉄形」と「外鉄形」に分類されます。
変圧器には鉄心とコイル以外にも、意図しない場所への電流の侵入を防ぐための絶縁と、変圧器内での電力損失によって生じる熱を冷やすための冷却装置などが備え付けられています。
変圧器の冷却方式は大きく分けて2種類。
油に浸して冷却する「油入式」と、空気やガスで冷却する「乾式(=モールド)」です。
油入式・乾式のいずれも、油や空気の対流を利用して周囲へ放熱する「自冷式」、外部ファンで強制的に冷却する「風冷式」、冷却水を循環させて冷やす「水冷式」と、冷やし方によってさらに細かい種類に分類されています。
さらに、配線方式によっても「単相」と「三相」に種類が分かれます。
単相は電灯負荷と言い、一般家庭やオフィスで使用される100Vの電源のこと。
三相は動力と言い、たくさんの電力を一度に送ることができる200Vの電源のことで、工場や商店などでよく使用されます。
他にも、変圧器は構造によって以下のように分類されます。
分類 | 種類 |
内部構造 | 内鉄形・外鉄形 |
相数 | 単相・三相・三相/単相など |
巻線の数 | 二巻線・三巻線・単巻線など |
耐熱クラス(絶縁) | A: 105℃, F: 155℃, H: 180℃まで |
冷却媒体 | 油入・不燃液・ガス絶縁・乾式 |
冷却方式 | 自冷式・風冷式・水冷式など |
タップ切換方式 | 負荷時タップ切換・無電圧タップ切換 |
油劣化防止方式 | 油中水分吸着材内蔵・材無圧密封式・窒素封入など |
3.なぜ変圧器は電圧を変換できるの?
では、なぜ変圧器は電圧を上げたり下げたりできるのでしょうか?その原理を見ていきましょう。
まずは、変圧器の基本的な仕組みから。
入力側の1次コイルに交流電圧が流れると、出力側の2次コイルに電圧が発生し、それぞれのコイルの巻数によって電圧を自由に変えられる、という仕組みとなっています。
その原理は「電磁誘導作用(ファラデーの法則)」にあります。
入力側の1次コイルに電圧を加えると交流電流が流れ、鉄心の中に磁束が発生します(アンペールの法則)。磁束は鉄心を通って2次コイルに交わります(鎖交)。
コイルには電磁誘導作用(ファラデーの法則)という、鎖交する磁束が変化すると電圧が発生する性質があります。
それにより2次コイルに電圧が誘導されて、再び交流電流に変換し出力されるという原理です。
変圧器の1次コイルと2次コイルの関係は、「V1/V2=N1/N2」で表されます。
例えば、1次コイルの巻き数が1,000で電圧が1,000Vの場合、2次コイルの巻数を100にすると100Vの電圧が発生。
この原理により、変圧器で電圧を自由に変更することができるのです。
以上、電気事業に関わる技術者にとっては土台とも言える変圧器についての基本的な役割から構造、原理についてご紹介しました。