電気自動車の給電方式とは?有線給電とワイヤレス給電について
- 有線給電は効率よく短時間に充電できる。
- ワイヤレス給電はケーブル接続の手間がなくなり、感電のリスクもない。
- 電気自動車のワイヤレス給電は、「磁界共鳴方式」を中心に標準化が進められている。
最近街中でも見かける機会が増えてきた電気自動車。
従来のガソリン車よりも地球環境にやさしく地球温暖化対策にもなるため近年、特に開発に力が入れられています。
また、電気自動車とガソリン車のメリットをあわせ持つハイブリッド車も普及が加速する現在。
これら電気を動力として走行する電気自動車やハイブリッド車には、ガソリンの給油と同じく給電が必要となります。
給電方式は、「有線給電方式」と「ワイヤレス給電方式」の2種類が存在します。
ここではこの2種類の給電方式についての概要をご紹介します。
1.有線給電方式について
現在、電気自動車の充電スタンドとして普及しているのが、ケーブルを使った「有線給電方式」で、「普通充電器」と「急速充電器」の2つに分類されます。
「普通充電器」とは、主に家庭やショッピングモールなどの商業施設に設置されているもので、100Vと200Vの2種類があります。
家庭用の交流電気(AC)を電気自動車にプラグで接続すると、自動車に搭載されている充電器が直流電気(DC)に変換してバッテリーに充電するという仕組みです。設備導入費用が急速充電器よりも安く、自宅など長時間駐車する場所での利用に適しています。
「急速充電器」は、主にサービスエリアやガソリンスタンドなどに設置されています。
直流電気(DC)で直接バッテリーを充電することが可能。普通充電器よりも高い電圧と電流を流すことができ、出先での継ぎ足し充電や緊急充電に適した仕様になっています。
日本国内では、「CHAdeMO(チャデモ)」と呼ばれる急速充電器や接続ケーブル・プラグの規格化が進められています。
有線給電方式のメリットとしては、効率が高く、充電時間が少なくて済むことがあげられます。
一方、重い充電ケーブルとコネクタを人の手で持ち上げて接続しなければならないため手間がかかり、手順を誤ると感電のリスクがあります。
また、防水性を備えた場所に充電スタンドを設置する必要があります。
2.ワイヤレス給電方式について
電気自動車の普及や自動運転技術の実用化の流れを受けて、世界中から注目を集めている方式が「ワイヤレス給電システム」。
ワイヤレス給電システムは、地面に敷設した送電コイルから電気自動車側の受電コイルへケーブルやプラグをつながずに電力を供給する仕組みです。
ケーブル接続による手間がなくなるため、車から降りずにちょっとした停車時間でも自動的に充電することが可能です。さらに充電器に触れる必要がないので感電のリスクがなく、安全性も高いというメリットがあります。
その他にも、
- ●充電頻度を上げることで車載蓄電池の容量を小型化できる。
- ●地面に敷設するので既存の駐車スペースを活用でき、省スペース化を実現。
- ●ケーブルやコネクタなどの消耗部品がなく、メンテナンスフリーで維持費を抑えられる。
といった点も大きな利点と言えます。
さらに自動運転が実用化されれば、人が充電に全く関与せず自動で充電できる環境も実現できるでしょう。
一方、有線給電方式に比べると伝送距離が短く、充電器のある場所へ駐車した際の位置ずれにより、うまく充電できない可能性があります。
加えて、有線給電と比べて伝送できる電力量が少なく充電時間が長くなります。
電気自動車のワイヤレス給電方式は、伝送方式で主流になると言われている「磁界共鳴方式」を中心に規格の標準化が進められています。
米国自動車技術会(SAE)は、下図の通りワイヤレス給電システムの規格化をWPT2※まで行い、WPT3以上についても検討しています。なお標準化を前に、2014年にはアメリカで3.3kW出力品がすでに販売されています。
※WPT=Wireless Power Transfer(ワイヤレス電力伝送)
一般車両用WPT電力クラス | WPT1 | WPT2 | WPT3 | WPT4 |
最大入力電力 | 3.7kW | 7.7kW | 11kW | 22kW |
推奨効率 | 85%(最適ポジション時) |
また、スポーツカー向けのZ1、普通乗用車向けのZ2、SUV向けのZ3といったように、車高に合わせて地上から受電コイルまでの距離を規定する規格も定められています。すでに、WPT3でZ1~Z3まで対応したワイヤレス給電システムが製品化されています。
一般車両クラス | Z1 | Z2 | Z3 |
地上高 地上から受電コイルまでの距離 |
100~150mm | 140~210mm | 170~250mm |
電気自動車が広く普及するためには、利用者の安心感や利便性を向上することが必要不可欠です。
そのため、充電時間の短縮をもたらす急速充電器や手軽で簡単に充電できるワイヤレス給電システムの開発と導入が並行して進むと考えられます。
従来のガソリンの給油のように、多少の時間をかけてフル充電する「急速充電」と、買い物の合間などに立ち寄り先のパーキングで手間なく充電し、走行距離を伸ばす「ワイヤレス給電」が共存すれば、電気自動車の利便性は劇的に向上するでしょう。
また、研究開発が進められているロボットや機器を活用した「電池交換システム」の導入も検討されはじめています。
現在、電気自動車の給電は有線充電方式が主流となっていますが、今後はより便利で安全性の高いワイヤレス給電方式との共存も見込まれています。電気自動車自体の普及とも密接な関係にあると言えるこの技術。ますます目が離せません。