パワーコンディショナの出力制御とは?注意すべきポイントを解説
- 出力制御とは、電力の出力を一時的に抑制すること。
- 太陽光発電では、ルールにより無補償で出力を抑制する必要がある。
- 太陽光発電は出力制御機能付パワーコンディショナで出力制御に対応可能。
パワーコンディショナ(以下PCS)における「出力制御」とは、電力出力(供給)の一時的な停止、もしくは抑制を行うことを意味します。太陽光発電でたくさんの電気が発電できる時に、なぜ電力の出力を抑制しなければならないのでしょうか?ここでは、その仕組みの概要や制度が生まれた背景から、PCSの出力制御について分かりやすく解説します。
1.出力制御とは?
出力制御は、2015年1月に「再生可能エネルギー特別措置法」が改正されたことにより取り入れられた制度です。電気は発電と消費が同時に行われるため、発電した電気を貯蔵することができません。そのため、変動する消費量にあわせて発電量を常に一致させておく必要があり、これを「同時同量」と言います。電力会社では、消費量(需要)を予測し、発電計画を決めて、発電所の出力(供給)を調整して需給バランスを保っています。
このバランスが崩れ、需要に対して供給が少なくなると周波数が低下します。反対に需要に対して供給が多くなると周波数が上昇してしまいます。そして、適切な周波数が保てなくなると、大規模停電が発生してしまう恐れがあるのです。つまり、電気の需給バランスを、常にいい状態に保つために「出力制御」が必要になるのです。
2.出力制御が必要になった背景
出力制御が必要になった背景には、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの急速な普及があります。2012年7月、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを用いて発電した電気を、国が定める価格で電力会社が買い取ることを定めた「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)」が開始されました。これを受け、太陽光発電をはじめとした発電設備は当初の予定を超える勢いで導入が加速。電気の需要より供給が上回ってしまうことが懸念されはじめました。
前述の通り、電力は需要と供給のバランスを保たなければ、大規模停電などのトラブルにつながってしまいます。そこで、「再生可能エネルギー特別措置法」の一部改正を関連告示し、2015年1月に改正法が施行されました。
3.出力制御ルールの変更
再生可能エネルギー特別措置法の一部改正に伴って、太陽光発電における「出力制御ルール」が変更されました。主なルールを見ていきましょう。
指定ルール
無制限・無補償の出力制限が行われるルールです。国から指定電気事業者に認定された電力会社が、接続可能量※を超えた後に接続申込を行った発電設備に、上限時間なく無補償で出力制御を要請できます。
360時間ルール(新ルール)
年間360時間を上限に無補償で出力制御を要請できるルールです。電力会社が出力を抑制しても、電力供給が需要を上回ってしまう場合に適用されます。
※接続可能量
FIT制度において電力会社が30日、360時間の上限を超えて出力制御をおこなわなければ、追加的に受入不可となる時の「太陽光発電の受入可能な量」のこと。
4.パワーコンディショナにおける出力制御とは
太陽光発電において出力のコントロールを行うのは、PCSの役割です。PCSには、太陽光発電設備によって発電した電気を、安定した出力に整えて系統へ連系する機能があります。この機能を活用して、系統に連系する発電量を自動で制御する「出力制御機能」を搭載したPCSのことを「出力制御機能付PCS」と言います。
出力制御機能付PCSシステムの構成
①PCS(広義) 出力制御機能付PCS |
電力会社または配信事業者が提示する出力制御スケジュール情報を取得し、そのスケジュールに応じて発電出力を制御する機能を有するPCSと定義する。基本的には「②出力制御ユニット」と「③PCS(狭義)」から構成する。(②、③の機能を一体化したシステムもある) | |
②出力制御ユニット | サーバから出力制御スケジュールを取得し、出力制御スケジュールに基づいて「③PCS(狭義)」を制御する機能をもつ制御装置と定義する。外部通信機能がない場合でも、ユニット内に保存された固定スケジュールにより「③PCS(狭義)」を制御する。 | |
③PCS(狭義) | 従来のPCSの機能に加え、「②出力制御ユニット」から出力制御情報を受けて、太陽光発電の出力(上限値)を制御する機能を有するPCSと定義する。 |
注)PCS(狭義)と出力制御ユニットは、製造メーカーが異なっても、PCS(広義)の仕様を満たすものとする。
出典:太陽光発電協会・日本電気工業会・電気事業連合会「出力制御機能付PCSの技術仕様について」