ワイヤレス給電とは?原理やメリットを紹介
- ワイヤレス給電とは、ケーブルやプラグがなくても電力を伝送できる仕組みのこと。
- スマートフォンや電気自動車の充電など、様々な分野で実用化が進んでいる。
- 給電の手間が軽減され、メンテナンスも不要である。
私たちの生活に欠かせない電化製品。
家庭で使用する電化製品はもちろん、工場などで使われる様々な機器を動かすためにも電気が必要です。
現在、給電はコンセントにつないで行うのが一般的である中で、
スマートフォンをはじめ、ケーブルをつながなくても給電できる「ワイヤレス給電」という技術が普及しつつあります。
私たちの生活をより便利にしてくれる「ワイヤレス給電」について、原理やメリットを紹介いたします。
1.ワイヤレス給電の原理とは?開発の経緯や今後の展開
現在一般的に普及しているのが、電源ケーブルをコンセントにつないで電力を送る有線給電方式。
この方式はケーブルの引き回し、電源プラグの抜き差しが必要です。また、ケーブルの長さによって設置場所が制限されたり、ごちゃごちゃとした配線で美観を損ねたりするというデメリットも。
これらの課題を解決する新しい給電方式として、最近注目を集めているのが「ワイヤレス給電」です。
ワイヤレス給電とは、電源ケーブルの接続や金属電極の接触を行わずに、電力を伝送する技術のこと。
磁界を用いるワイヤレス給電では、図のように、送電路に2つのコイルを置くことで、送電コイルから受電コイルへと非接触で電力を送ることを可能にします。
ワイヤレス給電技術の始まりは、1831年にファラデーにより発表された電磁誘導の原理が元になっています。
1899年には、ニコラ・テスラによって雷発生装置を使った電球点灯実験が成功。20世紀初頭には、テスラが考案したテスラコイルを用いて“世界システム”と呼ばれる電力を送るという壮大な構想があったものの、失敗に終わりました。その後も色々な研究が続けられていましたが、目覚ましい進展を見せてはいませんでした。
しかし2007年、マサチューセッツ工科大学の研究者が、磁界の共鳴という現象を利用したワイヤレス給電技術を発表。ワイヤレス給電技術は、世界中から一躍注目を集めることとなりました。
最近ではスマートフォンをはじめとした、一般消費者用のエレクトロニクス機器や電気自動車といった身近なものだけでなく、医療機器、産業機器などでの利用に向けた開発が進められ、実用化も行われています。
通信分野では有線からBluetooth®、Wi-fiなどのワイヤレスに置き換わりましたが、これと同じことが電力伝送分野でも起こり、今後はワイヤレス給電技術が生活基盤を支えるインフラとなっていくかもしれません。
2.ワイヤレス給電のメリットとは
ワイヤレス給電の最大のメリットは、何と言ってもケーブルからの解放(=ケーブル・フリー)。
ワイヤレス給電が導入されれば、電源ケーブルの抜き差しや配線が不要になり、位置を合わせるだけで意識せずに給電ができるようになります。
ケーブルの断線やコネクタの劣化・消耗がなくなるため、メンテナンスフリーも実現。
また、金属接点がなくなるため、水に濡れてショートしたり感電したりする危険性もなくなります。
ワイヤレス給電技術は、非金属など磁界をさえぎらない材質であればコイルの間にモノがあっても問題なく、水中やガラス越しでも給電することが可能です。
例えば、放射性物質や有毒ガスがあり人が立ち入れないようなエリアにも給電する、といったことも実現できるのです。
ワイヤレス給電技術が普及すれば、わずらわしいケーブル接続の手間から解放されるだけでなく、給電や充電を意識せず、電池切れを心配する必要がなくなり、より便利で快適な生活が実現することは間違いありません。また、電気自動車の全面的な導入の加速の一翼を担う存在としても、さらに関心が高まっていく技術と言えるでしょう。