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社会的課題

災害発生に伴う停電時の電源確保の課題を解決!

長時間の安定した電力供給を実現する最先端非常用電源システムでBCP対策を

「台風のときに電気がなかなか復旧せず、大変な思いをした」「もしまた自然災害が起こったら…」。近年、頻発している台風や地震、大雨などの自然災害によって発生する停電に対し、不安やBCP対策への課題を抱えている自治体や企業、市民の方々も多いのではないでしょうか?「災害時に有効な非常用電源があれば」それを実現するために開発されたのが、次世代の非常用電源システム『V2X※1システム』です 。このシステムの特長や現在主流となっている非常用発電機の問題点なども含め、開発チームに話を聞きました。

Profile

大堀 彰大 Akihiro Ohori
株式会社ダイヘン 技術開発本部
EMS開発部 課長(2008年入社)
パワーコンディショナの開発担当を経て現職。V2Xシステムを含むダイヘンのEMSソリューション全体のマネージャーとしてビジネスモデルの構築などに従事。
西尾 隆平 Ryuhei Nishio
株式会社ダイヘン 技術開発本部
EMS開発部(2011年入社)
入社以来、パワーコンディショナの開発に従事し、現在は蓄電池用パワーコンディショナの設計・開発も担当。V2Xシステムの開発にあたってはプロジェクトリーダを務めた。

停電の不安がなくなる!
次世代の非常用電源システム誕生

創業以来、時代のニーズに応えて新たな価値の創造にチャレンジし続けてきたダイヘン。変圧器からスタートし、近年では世界的なCO2削減意識の高まりなどを受け、スマートコミュニティの形成や電気自動車の普及拡大に貢献するシステムを開発しています。
その電気テクノロジーのプロフェッショナル達が生み出した次世代の非常用電源V2Xシステム。その概要について、開発のプロジェクトリーダーである西尾氏にお聞きしました。

このシステムは簡単に言うと、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド(PHEV)車向けの「充放電設備」と定置型の「蓄電池設備」を一体化したもの。それによって、災害時に長時間安定した電力供給を可能とする非常用電源システムです。さらにこの製品には、停電時の非常用電源、平常時の電気料金低減(ピークカットシステム)、EV・PHEV用の急速充電ステーションという3つの役割もあります。まさに一台3役の非常用電源システムと言えますよね」。

そして、西尾氏が自信を持って語るこのV2Xシステムにも、ダイヘンのこれまでのチャレンジ同様「時代のニーズ」という背景があったのです。

非常用電源「V2Xシステム」

このシステムを開発する背景となったのが、2015年9月、国連総会で採択された『SDGs(持続可能な開発目標)』であり、その11番目に掲げられた『住み続けられるまちづくりを』という世界的な目標です」と語るのは、開発マネージャーとして指揮を執る大堀氏。

特に近年は台風や地震、大雨など大型の自然災害が増加しており、都市では災害時の経済損失によるリスクが拡大しています。そこで求められるのがBCP対策となり、災害による被害を最小限にとどめるための高い対応力や柔軟性を持った「しなやか」なまちづくりです。

しかし今、そのまちづくりにおいて最重要課題となっているのが、「災害発生に伴う大規模停電時の非常用電源確保」。消防庁の発表によると、90%近くの自治体が非常用電源を設置していると言われていますが、そのほとんどが非常用発電機。一般的にも、「非常用電源=非常用発電機」というイメージが強いと思いますが、実はこの非常用発電機、長時間使用可能な電力を供給するにはいくつかの課題があります。

自治体はもちろん、企業においてもBCP対策として、この『災害発生に伴う大規模停電時の非常用電源確保』という課題が立ちはだかっています。そして、私たち開発者の身近なところにも、ここ数年で自然災害による大規模停電の影響を受けた人たちもいます。「停電のときはとても不安だった」「不便で非常に困った」という切実な声も聞いています。社会全体のニーズとして、さらに私たち自身の身近な課題として、この非常用電源の確保という課題を解決したい!そのために、ダイヘンにしかできない非常用電源システムを開発しよう!とスタートしたのが、このV2Xシステムの開発だったのです」。

当時を振り返りながら大堀氏が語ってくれました。こうして2017年、ダイヘンの蓄電池や高圧の受電設備といった各分野のプロフェッショナルたちが集結。試行錯誤の2年間で、この課題を解決するシステムが誕生しました。

いざという時に使えない可能性も。
非常用発電機の問題点とは?

現在多くの自治体で設置されている非常用発電機。その問題点は、長時間使用可能な電力を供給するためには非常に手間がかかるということです。その理由として挙げられるのが、「燃料の維持」と「発電機のメンテナンス」。具体的なデメリットについて西尾氏は語ります。

発電機の燃料は軽油や重油がメインとなりますが、使用しなければ軽油は6ヵ月、重油は3ヵ月で劣化します。ですから定期的に燃料を入れ替える必要があります。それに、発電機はタンク内の清掃に加えて年に1回の点検も義務付けられています。あまり知られていませんが、使用できるように維持するにはとても手間のかかる機器なのですよ」。

このように非常用発電機は、設置している自治体への負担が大きく、「いざという時に使えなかった」ということが東日本大震災の際にも多くみられました。

また、V2Xシステムと同様にEVから電気を取り出せる機器としてV2H※2があります。このシステムも非常用電源になるのでは?と問いかけると、大堀氏はこう答えてくれました。

V2Hは家庭用であるため、出力は『単相※3』の電力。だから、家庭用の非常用電源としては使用可能ですが、エレベーターや浄水ポンプ、大型空調設備などの『産業用』の電気供給が必要なものは動かすことができないのです」。

つまり、私たちが災害時に頼りにする避難所などの大きな施設を維持したり、非常時における衛生環境を維持することが困難になってしまうということなのです。

燃料維持の手間が要らず、産業用機器も稼働できる。
ダイヘンならではの大きな魅力

このような非常用発電機の問題を解決してくれるのがV2Xシステムです。大きな特長の一つが、軽油や重油などの燃料を必要としないということ。なぜなら、EVやPHEVに搭載されている蓄電池から電気を供給するからです。さらにEVやPHEVがない場合でも、定置蓄電池から電力を供給することができます。

非常用発電機とは違って面倒な燃料管理が不要になり、燃料や機器の維持に手間がかかるという課題も解決できます。EVやPHEVが自走で電気や燃料を補給しに行くことで、まるで乾電池を詰め替えるように『長時間の安定した電力供給』が可能になるというわけです」と語る西尾氏。

V2Xは、自治体の負担を大幅に減らす新しい電力供給のシステムだと言えます。

そしてもう一つの大きな特長が、エレベーターなど大型機器も稼働できるということ。現在は蓄電池用パワーコンディショナの設計・開発も担当する西尾氏によると、「大型機器を動かすには産業用の『三相※4』の電力が必要。V2Xシステムはその三相の電力が供給できるシステムなのです。それが実現できたのは、当社が『産業用電機メーカー』として、大容量の蓄電池設備とEV充放電器をラインナップしていること、さらに高圧受電設備や太陽光発電などのメガワット級設備についてのノウハウを持っていたからです」。

まさにダイヘンだからこその技術で、単相の電力では実現できなかった避難所などのインフラとして欠かせないエレベーターや浄水ポンプなどの大型機器も動かすことができるのです。

また、エレベーターや浄水ポンプなど、三相の電力を使用するには高圧区分の電力契約を結ぶのが一般的です。この場合、高圧受電設備(キュービクル)を介して必要な低圧電力に電圧を下げて建物内に電気を供給します。建物内には複数の低圧の分電盤があり、そこから各部屋のコンセントなどに分配することで電気を使用します。しかしこの際、V2H機器などの低圧用の機器では供給できる電力が小さいため、停電時には必要な機器やコンセントを選別して配線を接続し直すなどの工事が必要となります。

この点においても当社のV2Xシステムであれば、わずらわしい低圧回路の工事を不要にできるのです」と西尾氏。

この三相のノウハウは、家庭用の単相とは全く異なるもの。そして、「三相のノウハウがないメーカーが対応することは、非常にハードルが高いこと」だと大堀氏。さらに、三相用機器を手掛けるメーカーで、この非常用電源システムの開発に取り組んだのはダイヘンが初めてだといいます。

また、これらは非常時におけるV2Xシステムの優位性ですが、非常時以外でも優れた特長があります。
西尾氏によると、「非常時以外は、購入電力のピークを低く抑えるように施設内の電力を制御する『電力ピークカットシステム』やEV/PHEVの『急速充電ステーション』としても利用でき、設備利用率も高くなります」。

加えて、三相の電力が使えることで太陽光発電システムの併設も可能となります。太陽光で発電した電気をEV/PHEVや蓄電池への充電に使用するなど、環境へ配慮したシステム構築が可能となり、CO2削減などにもつながります。

これにより、ESG投資の拡大によって増加している企業の脱炭素社会への取り組みにも貢献できると考えます」という大堀氏。自治体だけでなく、企業にもメリットの高いシステムだと言えます。

タワーマンションから避難施設まで。
オールマイティな非常用電源としての活用に期待。

現在、V2Xシステムを導入しているのは、廣大産業様(鳥取県)と四変テック(香川県)。導入の経緯について西尾氏は、「廣大産業様は、かねてより様々な先進的事業を展開されています。今回も避難所が不足する当該地域で自社事務所の一部を避難所として開放し、有事の際に孤立する周辺住民の拠り所とするためにV2Xシステムを導入されました」。導入したシステム構成は、EV充放電器1台にPVシステム10kW。当該地域でもメディアに取り上げられるなど注目されています。

また、導入にあたっては、「環境省補助金」を活用するため、執行団体にV2Xシステムの説明を行ったそうです。
補助金の要件を満たすために仕様変更・改造、動作検証を行い、申請資料作成におけるシステム設計フォローも行いました。その甲斐あって、補助対象に認めていただきました」と大堀氏。

設備風景(廣大産業様)

※1 V2X:Vehicle to Everythingの意。電気自動車(EV)をはじめとした蓄電池を持つ自動車と、住宅・ビル・電力網の間で電力の相互供給を行う技術やシステムの総称。また、自動車で情報をやり取りする技術やシステムの総称。
※2 V2H:Vehicle to Homeの意。EV等の電力を家庭用の電力供給源として利用することを指す。
※3 単相:電圧が低く、一般的な家電製品に電気を送る際に利用される電気交流のこと。
※4 三相:大きな電力が必要な産業用の電気機器など大型電気製品に電気を送る際に利用される電気交流のこと。

一般的な非常用電源が持つ様々な課題を解決することができるV2Xシステムであれば、大規模施設での電力供給や非常時における衛生環境の維持が可能となります。

今後は、タワーマンションや学校、避難施設といった場所にも導入され、より多くの地域で自然災害における非常用電源の確保という課題を解決していくことでしょう。

Products of DAIHEN

V2Xシステム

本製品は急速充電ステーションと蓄電池設備を一体化することで、災害時などに長時間の安定した電力供給を可能とする非常用電源システムです。

SynergyLink
Synergy Link

「Synergy Link」は高性能な中央監視制御装置(拠点管理サーバ等)を使用せずに、機器やシステム同士が協調(Synergy)して繋がり(Link)、最適な状態に導くことができる 新しい制御技術です。

DISOLA POWER STORAGE PACK

自家消費向け太陽光発電 蓄電池搭載 変電設備パッケージ。電気料金を削減したいという悩みを解決します。

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