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開発ストーリー

2020.03.31

災害時でも住み続けられるまちづくりを目指して非常用電源「V2Xシステム」開発ストーリー

Geeks Lv2

西尾 隆平 Ryuhei Nishio

株式会社ダイヘン 技術開発本部
EMS開発部
(2011年入社)

大堀 彰大 Akihiro Ohori

株式会社ダイヘン 技術開発本部
EMS開発部 
課長(2008年入社)

2018年、ダイヘンがリリースしたV2Xシステムは、これまで世の中になかった唯一無二のシステム。EV・PHEV車向けの「充放電設備」と定置型の「蓄電池設備」を一体化し、災害時に長時間安定した電力供給を可能とする非常用電源システムです。そこには、パイオニアとなった開発者たちの熱い想いやこだわりが込められていました。

01V2Xシステム開発の背景 まだ世の中にないものを!
災害時でも人々が安心した生活を送れるためのシステム

電力機器の開発・生産・販売で、電力インフラを支え続けてきたダイヘン。そのダイヘンが「災害時に長時間安定した電力供給を可能とする非常用電源システム」として開発したのが、V2Xシステムです。
このプロジェクトに集結したエンジニアは、電力テクノロジーのプロフェッショナル達。蓄電池や高圧受電設備など、それぞれのノウハウと共に、こんな想いも込めていました。

災害時でも安定した電力を供給し、人々が安心した生活を送れるようにしたい

開発マネージャーとしてビジネスモデルの構築も行う大堀氏はこう語ります。
ダイヘンがこれまでつくり出してきたものは、インフラを中心に『世の中のお役に立つもの』。そして、このV2Xシステムもその一つにしたい。さらにメンバー全員が開発者として、『まだ世の中にない製品を生み出したい!』というモノづくりへの想いを強く持ってプロジェクトを進めていきました」。

トライ&エラーを繰り返しながら、2年間の開発期間を経て完成したV2Xシステムは、2018年にリリース、徐々に導入実績も積み上げています。

02ユーザー目線にこだわった設計 車一台分のスぺースで専門知識も必要ナシ
本当に“使える”システムの開発

モノづくりでは必ずと言っていいほどつくり手の「こだわり」が盛り込まれています。それはV2Xシステムも例外ではなく、その一つが「駐車場1台分のスペースに収まる筐体設計」です。

開発当時を振り返ったプロジェクトリーダーの西尾氏は、
V2Xシステムは、車に関わるシステムなので、駐車場の近くに置けることが理想的です。そのためにコンパクトな筐体設計にして、駐車場の1台分のスペースを使用すれば設置できるようにこだわりました」。

実はこの規模の蓄電池設備の設計では、火災予防条例により建物から3m以上離して設置する必要があるため、駐車場の近くに置けない場合がでてきます。その制約をなくすための設計方法を試行錯誤し、建物から離さずに設置できるようにしました」。

こうして、機能だけでなく実用的なシステムとして設計されたV2Xシステムですが、「実用的」という点で、もう一つ譲れないこだわりがありました。それは、人が使用するうえで決して忘れてはならない、「簡単に使える」ということでした。

大堀氏によると、
通常、電力復旧時には一度専門家の手で電源を落とす必要があるのですが、V2Xシステムは自動で検知して、人手を介さずに自動で電源を切り替えてくれるのです。いわば停電などの非常時には電気技術者などの専門家を必要とせず、設置してしまえば簡単に使うことができるのです」。

優れた製品たる所以には、ユーザー目線が欠かせません。まさしくV2Xシステムはユーザー目線でモノづくりを行い、本当の意味で非常時に“使える” 製品だと言えるでしょう。

03自治体や避難所等、様々な環境への対応 ダイヘンならではの技術でフレキシブルな運用が可能に

ユーザー目線の製品開発で、実用性の高いシステムとなったV2Xシステム。しかし、ユーザー自身だけでなく、ユーザーが持つ環境も千差万別。そのため、環境に合わせたニーズに応える必要があります。例えば、駐車スペースが少ないので、できる限り小規模にしたい。逆に、できる限り多くのEVを使用したいなど。V2Xシステムはユーザー毎の環境に対応できる“カスタイマイズ性の高さ”がポイントです。

EVの保有台数に合わせ、蓄電池設備+EV充放電器1~5台のカスタマイズが可能です。また、太陽光発電など既存の発電設備と組み合わせた運用も可能ですよ」と西尾氏。お客様のニーズに合わせたオーダーメイドの設計が可能です。

大堀氏は、こういったカスタマイズは“ダイヘンならでは”の技術で、より幅広いものになると言います。

当社は長年、産業機器メーカーとして太陽光システムにも関わっている実績からメガワット級も得意としています。基本はEV充放電器5台以内ですが、「5台以上に」というニーズに応えることも可能です。また、すでに太陽光を導入されている場合、簡単な回路変更で組み合わせることができます。公用車や社用車をEV化すれば、太陽光発電で余った電気でEVを走らせるなど、有効活用することもできるわけです」。

また、導入後にカスタマイズができることも大きなメリット。

V2Xシステムには、当社独自の「Synergy Link(シナジーリンク)」という制御技術を使っており、これにより機器を後から追加しやすく、すぐに動かすことができます。例えば、最初に充放電器を1台導入し、あとから追加で5台導入しても、通信さえできていればシステム変更をすることなくすぐに使えます。スモールスタートも切りやすく、状況やニーズの変化に合わせて導入できるのです」と西尾氏は語ります。

自律分散協調制御「Synergy Link」

自律分散協調制御「Synergy Link」

自律分散協調制御「Synergy Link」 動作原理について

04規格化されていない新たなシステムの開発 機能性を重視し、妥協は一切なし。
無謀とも言えるチャレンジで得たパイオニアの地位

電力機器に対する高い技術とノウハウを持ったダイヘンですが、「まだ世の中にない製品を生み出す」ためには、今までにない壁が待ち受けていました。

今までにないシステムをつくるということは、規格化もされていないということ。それをどう落とし込むかということにとても苦労しましたね」と、当時の苦労を振り返る西尾氏。「車側の充放電設備の規格、高圧設備の規格、蓄電設備の規格があり、異なる設備の規格を参照しながら、それぞれにマッチする形でシステムアップしていきました。その際に電力会社様やCHAdeMO協議会、消防署に相談したりと、関係各所とのディスカッションを経て製品を作り上げていきました」。

さらに壁となったのが認証の問題。世の中にないものをつくるため、なんと開発前は認証が取れるかどうかもわからない状態だったのです。通常であれば、そういったリスクのある開発には躊躇してしまいますがあえて踏み出し、無謀とも思えるチャレンジを行ったのは、開発者たちのこんな想いがあったと大堀氏は語ります。

このプロジェクトを立ち上げようと考えたきっかけとなる、『災害時でも安定した電力を供給し、人々が安心した生活を送れるようになる製品をつくりたい』という想いがあったからこそ、妥協することなく機能性を重視したチャレンジを行うことができました。結果的に認証を取得することもでき、新しく認証の範囲も広げ、この分野の“パイオニア” になれたと思っています」。

その結果、ダイヘンはこの規模のEV充放電システムを初めて市場投入したことで、講演依頼もあるほど注目されることにもなりました。

私たちの街でも不安が消える
バリエーションの増加で幅広い課題解決を

2018年にV2Xシステムの初導入を行って以来、様々な自治体や企業から問い合わせがあるというダイヘン。その背景には、自治体や企業が直面している、「大規模災害に備えた非常用電源の確保」という社会的課題が存在しています。こういったBCP対策への関心の高まりを受けて西尾氏は、「ダイヘンではV2Xシステムを通じ、大規模災害に伴う停電に備えた非常用電源の確保という課題の解決にチャレンジし続けていきたいと考えています。そのために今後は、V2Xシステムのバリエーションを増やし、お客様それぞれのBCP対策に向けた幅広い提案を行っていきたいですね」と、その発展性についても語ってくれました。

V2Xシステムを世に送り出したのは、プロジェクト全体を俯瞰に見て、ビジネスとして形づくっていった大堀氏や、開発の最前線で腕を振るった西尾氏など、社会的課題の解決に対する膨大な熱量と、より良い製品をつくることへの妥協のないこだわりを持った開発者たちです。

彼らが今後、この熱量を持ってさらにこのシステムを発展させてくれたならば、私たちの街でも停電時の不安がなくなるかもしれない。そう思える開発者たちと、彼らが生み出した唯一無二のシステムだと取材を通して感じました。

Products of DAIHEN

V2Xシステム

本製品は急速充電ステーションと蓄電池設備を一体化することで、災害時などに長時間の安定した電力供給を可能とする非常用電源システムです。

Synergy Link

「Synergy Link」は高性能な中央監視制御装置(拠点管理サーバ等)を使用せずに、機器やシステム同士が協調(Synergy)して繋がり(Link)、最適な状態に導くことができる 新しい制御技術です。

DISOLA POWER STORAGE PACK

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