バーチャルパワープラント(VPP)実証実験
ダイヘンは、2016年7月より経済産業省資源エネルギー庁の補助事業である「バーチャルパワープラント(VPP)構築実証事業」に参画し、より効率的なエネルギー利用を叶えるインフラの構築を目指して、当社独自の制御技術「Synergy Link(シナジーリンク)」を用いた新たなエネルギーマネジメントの実証実験を行ってまいりました。
VPPとは?
VPP(Virtual Power Plant)とは、電力系統の中に点在する太陽光発電や蓄電池、EVなどの各機器をIoT化し、一括制御することで、あたかも1つの発電所(仮想発電所)のように機能させることができる新しい需給調整の考え方です。
資源エネルギー庁:「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス ハンドブック」
太陽光発電や蓄電池、EVなどの需要家の機器を「リソース」と呼び、そういったエネルギーリソースを統合・制御する者を「リソースアグリゲーター」と呼びます。
リソースアグリゲーターは、電力事業者の出力要請に応じて電力の調整を行い、エネルギーリソースを保有する需要家への電力売買の仲介を行います。
VPPによって実現できることは?
VPPによって
- 電力の需要と供給のバランスを最適に調整することができます。
- 一つ一つは小規模な設備であっても統合して制御することで、大規模な発電設備に匹敵します。
- ある需要家で余った電気は別の需要家で利用することができるため、太陽光発電のような発電量が不安定な電源も有効活用することができます。
電力の需要と供給は常にイコール
電気は蓄電池がないと貯蔵できず、品質の高い電気を供給するためには、常に需要と供給のバランスを保つことが必要となります。従来では瞬時瞬時の需要に合わせ、火力・水力・原子力などの大規模電源で必要量を発電し、供給を行っていました。
再生可能エネルギーの割合を従来の倍へ拡大
2014年に閣議決定された「第4次エネルギー基本計画」では、CO2排出量の削減や、エネルギー自給率の向上、電力コストの削減などの観点から、新たなエネルギー政策の方向性を示しました。
2015年に公開されたエネルギーのベストミックス案では、2030年の電源構成のうち、再生可能エネルギーの割合を従来の約2倍にする計画としています。
【2030年の日本のあるべき電源構成(エネルギーベストミックス)】
出典:「日本が抱えているエネルギー問題」関連資料(経済産業省)
(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/energyissue2020_2.html)
VPPは再生可能エネルギーの導入を拡大
再生可能エネルギーは発電量が自然環境に左右されるため出力が安定せず、石油火力のような供給の調整力はありません。そこで、再生可能エネルギーを受け入れるための取り組みの一つがVPPの構築となります。
VPPが実現すると、需要家側の機器(太陽光発電・蓄電池・EVなど)をIoT化して一括制御し、1つの発電所のように機能させることで、系統の調整力として活用することができます。
また、近年のIoTの発展や蓄電池・太陽光発電の普及により、VPP構築のための環境が整いつつあります。
ダイヘンのVPP構築実証事業
VPP構築実証事業に参画し、需要家のエネルギーリソースを一括制御する技術を実証
経済産業省資源エネルギー庁の補助事業である「平成28年度 VPP構築実証事業」に関西電力株式会社をはじめとした14社で共同申請し、採択されました。
この中で当社は、リソースアグリゲーター(RA)として、独自の自律分散協調制御技術「Synergy Link」を用いた「自律分散協調制御サーバのシステム構築」、「機器の遠隔制御実証」に取り組みました。
VPPに使用するエネルギーリソースとして、工場の電力 (節電で需給調整に寄与)の他、太陽光発電のような再生可能エネルギーの発電設備や蓄電池設備が想定されていますが、太陽光発電設備は、他の発電設備に比べると導入しやすいものの、日射によって発電量が大きく左右されるため、出力変動が非常に大きいという特徴があります。
その変動を蓄電池によって補うことができれば、安定した出力を持つエネルギーリソースとして活用することができます。
独自の制御技術「Synergy Link(シナジーリンク)」によるVPPの構築
VPPは火力発電や水力発電といった大規模電源と同等程度の供給量を確保するため、家庭用機器まで含めた大量の分散電源をIoT化し、統合制御する必要があります。
大量の分散電源の統合制御には地域・拠点単位でのサーバ設置やサーバ同士を連携する通信環境の構築、膨大な情報量を処理する上位系装置(例えばクラウドサーバ)が必要となるため、高機能かつ大規模ネットワークが必要となり、構築に費用と時間がかかります。
この問題を解決するソリューションとして、ダイヘンは独自の自律分散協調制御技術「Synergy Link」を提案します。
実証結果
年度 | 年度ごとの実証のねらい | 結果 | |
---|---|---|---|
制御対象 | RAサーバに関する開発 | ||
2016 (実証1年目) |
蓄電池のリソース (PCSの遠隔制御のみ) |
自律分散協調制御サーバ開発 (RA機能・UI等は次年度) |
・PCSへの連力指令・制御を確認 ・サーバとリソース用GW通信確認 |
2017 (実証2年目) |
蓄電池のリソース (太陽光制御含む) |
RA機能を有するサーバ開発 (関西電力様との連携機能) |
・1需要家を有する電力管区への DR指令に対する応答に成功 |
2018 (実証3年目) |
BEMS(空調)リソースの追加 | 複数拠点アグリゲーション を実現する機能の開発 |
・複数需要家を有する電力管区への DR指令に対する応答に成功 |
2019 (実証4年目) |
EVスタンドを含む V2Xリソースの追加 |
三次調整力②要件適合 に向けたシステム開発 |
・三次調整力の制御基準「基準値」 に対応してDR応答に成功 |
2020 (実証5年目) |
家庭用V2Hリソースの追加 | 機器端制御に向けたシステム開発 | ・複数の離れたリソースに対して 機器端でのアグリゲートに成功 |