ニュースリリース・お知らせ 2022年度

■要旨

株式会社ダイヘンは、大形変圧器の絶縁油として一般的に使用される鉱物油に代えて、環境負荷の低い植物油を使用した「菜種油入変圧器」（以下、本製品）を開発、このたび販売開始いたします。

当社は、既に販売開始している「パームヤシ油入変圧器」に本製品を加え、植物油の利点を生かした変圧器のラインアップを広げることで、これまで以上に脱炭素化、安全性・メンテナンス性の向上、長寿命化、コストダウン等の様々な顧客ニーズにお応えすることが可能となります。

尚、本製品に搭載されている新開発の「菜種油対応負荷時タップ切換器」（国内初）が国内生産可能となったことで、国内で初めて純国産菜種油入変圧器が市場投入されることになります。

■開発の背景

「2050年脱炭素社会」の実現に向け、再生可能エネルギーの活用やEVの普及など各所でCO₂を削減するための取り組みが加速しており、重電業界においても、環境に配慮した製品の開発・導入が進められています。

発電所や変電所で使用される変圧器の電気的な絶縁と冷却媒体として用いられる絶縁油には、従来から鉱物油が使用されていますが、上記のような環境配慮の観点から、鉱物油に代えて植物油への置換えに期待が高まっています。
植物油は植物の生育から油の精製、廃棄（焼却）に至るライフサイクル全体のCO₂排出量が大幅に少なく、脱炭素化に大きく貢献します。さらに、生態系に与える影響が小さいことや、防火性に優れていることに加え、変圧器の長寿命化が図れるなど、鉱物油と比較し様々な利点を有しています。

近年では、植物油の中でも比較的安価な菜種油の採用が増えつつありますが、菜種油など植物油の中には動粘度が高いタイプがあり、油中で高速動作を要するタップ切換がスムースに動作しないことや油の循環速度低下に伴う変圧器の冷却性能低下等の課題があります。よって、従来から 菜種油に対応した負荷時タップ切換器は海外製に頼らざるを得ず、メンテナンスの手間やコストがかかることに加え、冷却性能を保持するために放熱器の増加が必要となります。

これらの課題に対し、当社は独自の蓄勢機構により動粘度の高い菜種油においても適正な駆動トルク動作が可能な「菜種油対応負荷時タップ切換器」を新開発することで、国内で初めて菜種油を使用した純国産の大形変圧器の生産を実現、製品の安定供給と迅速なメンテナンス対応を可能としました。さらに、菜種油の高吸湿性を生かし、国内変圧器規格の温度上昇限度の格上げを行うことで放熱器の数量を削減することに成功、コストダウンも実現しました。

本製品の市場投入を機に、当社は一般民需向けの産業用変圧器や再エネ連系に最適な特高変電パッケージ等の製品へも植物油を展開し、更なるお客様の脱炭素化の取り組みに貢献してまいります。

■製品の特長

1. 環境配慮・脱炭素化
   
   • ・菜種油を使用することで、その原料となるアブラナの生育から油の精製、廃棄（焼却）に至るライフサイクル全体のCO₂排出量を大幅に削減（鉱物油比でCO₂排出量を約1/6に低減）
   • ・地震などの災害時に万が一自然環境中へ漏油した場合でも、高い生分解性により生態系への影響が非常に少なく、環境負荷（土壌汚染）を最小限に抑制
2. 菜種油の特性を生かした様々な利点
   
   • ・菜種油の高い引火点により安全性（防火性）が向上
     （鉱物油140℃、菜種油330℃）
   • ・変圧器の温度上昇限度を引き上げることが可能となり、
     放熱器の数量を削減（コストダウン）
   • ・高吸湿性により、巻線（コイル絶縁紙）の劣化抑制
     （長寿命化）
3. 国内初の純国産変圧器
   
   • ・国内初の菜種油対応負荷時タップ切換器開発により、
     国内生産を実現
   • ・安定した製品供給と迅速なメンテナンス対応が可能

菜種油入変圧器

■納入実績および今後の販売計画

＜納入実績＞

　関西電力送配電株式会社 新大岩変電所向け 負荷時タップ切換変圧器（2022年12月納入済）

• ・定格電圧（1次/2次）77/6.6kV、定格容量18.26MVA、3台
• ・定格電圧（1次/2次）77/22kV、定格容量30MVA、2台

＜販売計画（2023年度以降）＞

• ・電力会社向け　水力発電所へ変圧器3台納入予定
• ・民間企業向け　工場へ変圧器1台納入予定
• ・その他、産業用変圧器や再エネ連系に最適な特高変電パッケージ等の製品へも展開し植物油入変圧器のラインアップを拡大予定

■本製品に関するお問い合わせ先

株式会社ダイヘン 大形変圧器事業部 企画部
TEL：0598-38-3130