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ニュースリリース・お知らせ 2019年度

レーザ・アークハイブリッド溶接によるアルミニウム合金と鋼板の異材接合技術を開発

2019年5月28日

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【世界初】 レーザ・アークハイブリッド溶接による
アルミニウム合金と鋼板の異材接合技術を開発

■要旨

株式会社ダイヘンは、溶融接合が困難であったアルミニウム合金(以下、アルミ)と亜鉛メッキ鋼板(以下、鋼板)の異材接合法において、品質・信頼性が高いレーザ・アークハイブリッド溶接による新接合技術を世界で初めて開発いたしました。今後、自動車メーカを中心に提案を進め、2019年度内に製品化いたします。

■開発の背景

輸送機器の分野では地球温暖化や化石燃料の枯渇を防止するための対策が取られており、特に自動車業界ではCO2排出量削減を目的とした車体軽量化のため、従来より自動車部品へ高強度な鋼板を適用し板厚を低減することで車体軽量化が図られていました。近年のEV車の普及などにより更なる軽量化のためマルチマテリアル化が進むと考えられており、その軽量素材の筆頭となるアルミと鋼板を高品質に接合できる溶接技術の確立が強く求められていました。

しかしながら、アルミと鋼板の異材接合においては、融点や熱伝導率といった材料特性の違いにより、アーク溶接や抵抗スポット溶接といった溶融溶接の適用が難しいとされています。加えて、溶融溶接では母材への入熱が高くなることにより接合部に脆弱な金属間化合物(以下、IMC)が生成されます。一方、IMCを減らすために入熱を下げると十分な継手強度を有するビード幅を形成することが出来ません。これらのことから、溶接による異材接合で実用的な強度を確保することは実質的に不可能とされてきました。

そのため、従来からアルミと鋼板の接合にはリベットなどを利用した機械的接合法や接着接合法などが用いられる他、接合部分を溶融させない固相接合を中心に、新接合技術の研究開発が進められてきました。しかしそれらの接合方法は、強度や信頼性に課題があるだけでなく、大掛かりな設備や治具、特殊な接合部材の使用や複雑な接合工程が求められるため、ランニングコスト面でも課題がありました。

これらの課題を解決し、生産性が高く車体の接合に多用されてきたアーク溶接をベースとした汎用性の高い異材接合技術を確立するべく、アーク溶接における当社独自の電流波形制御技術と、精密な入熱制御が可能なレーザ技術を組み合わせた(ハイブリッド化した)独自の溶接・接合技術を開発いたしました。これにより、IMCの生成を最小限に抑制することに成功し、高い継手強度を実現するとともに、特殊接合材料が不要となることでランニングコストの低減にも貢献します。

■特長

  1. 高い継手強度
    • ・アーク溶接法として、極低スパッタを実現する当社独自の「シンクロフィード溶接法」にさらに改良を加えた“アルミニウム合金用電流波形制御法”を採用し、接合部に必要な溶融金属を極低入熱で供給。レーザヘッドは、古河電気工業(株)のビームモード制御技術を採用。レーザを最適な形状、入熱量で接合部に照射することで幅の広いビードを形成
      (=IMCの生成を極限まで抑制しつつ継手強度を高めるビード形状を実現)
    • ・自動車用として使用される6000系アルミと鋼板の接合において、5000系溶接ワイヤとの組合せにより6000系アルミ部で母材破断する接合強度を実現
  2. 汎用性の高い異材接合
    • ・アーク溶接をベースとした異材接合技術であるため、現状の溶接ラインに使用されている治具等の設備が流用可能
    • ・構造部材の形状や生産工程を大きく変更することなく、構造部材の素材をアルミに変更することが可能
  3. ランニングコストを低減
    溶接材料として一般的なアルミニウム溶接に使用される5000系ワイヤを用いるだけで、アルミと鋼板の異材接合が可能。他接合法に用いられるリベットや接着剤などといった特殊な接合材料が不要

■今後の展開

実用化に向けた製品開発ならびにお客様の生産現場でのフィールドテストなどを実施し、2019年度内の市場投入を計画しています。

■関連特許数

国内2件(出願中未公開)

■本製品に関するお問い合わせ先

株式会社ダイヘン 溶接機事業部 企画部
TEL:078-275-2005 FAX:078-845-8199