中容量真空バルブ式負荷時タップ切換器を開発
2014年03月13日
中容量真空バルブ式負荷時タップ切換器を開発
株式会社ダイヘン(本社:大阪市、取締役社長:田尻哲也)は、電力用変圧器に搭載し電圧を調整する装置「負荷時タップ切換器」について、このたび中容量の真空バルブ式を開発いたしました。
負荷時タップ切換器は、送電線の電圧を調整するために、変圧器に負荷をかけた状態で停電することなく、電圧の変動に応じて巻線のタップを切り換え2次電圧を調整する装置であり、現在、中容量の変圧器には油中アーク式が主流として使用されています。
油中アーク式の負荷時タップ切換器は、変圧器の絶縁油中容器内に設置されており、負荷をかけたまま回路を切り換えるため、絶縁油中でアーク(電弧)が発生し、それによって切換接点が消耗することから接点消耗量の管理のために定期的な保守点検が必要になります。また絶縁油がアークで汚損するので絶縁油の性能維持のために活線浄油機でろ過しなければならず、活線浄油機のメンテナンスの手間が発生します。
一方、真空バルブ式は、真空バルブ内でアークが発生するため絶縁油の汚損が少なく、活線浄油機が不要になる他、切換接点の消耗も非常に少ないためメンテナンス周期の延伸化が可能になり、環境面やコスト面での観点からも今後採用が広がっていくものと考えられます。
当社は、2002年に小容量の真空バルブ式負荷時タップ切換器の開発に成功し、これまでに国内電力会社向けを中心に約1,000台を納入してまいりました。
中容量以上のものについては、技術的な課題も多く、国産化が進んでおりませんでしたが、このたび当社は、小容量から中容量への容量の増大に比例して拡大する駆動装置を極小化すると共に、絶縁技術を駆使して限られたスペースの中に最適な配置をすることによりコンパクト化を実現。中容量の真空バルブ式負荷時タップ切換器の開発に成功しました。
本年3月には国内電力会社向けとしては初めて中容量真空バルブ式負荷時タップ切換器搭載の変圧器を納入する予定です。
なお、中容量の油中アーク式負荷時タップ切換器(当社形式:OTMRMⅢ 5形)については、これまで1,500台を超える製品を納入しております。
<特徴>
1.変圧器保護優先機構
切換開閉器の各相の負荷開閉部に真空バルブを2本適用し、各真空バルブへ直列に補助接触子を2接点接続することにより、各真空バルブの開閉電流を均等化できる当社特有の「2抵抗2バルブ2補助接触子式」という新たな信頼性の高い切換方式を採用し、切換開閉器に何らかのトラブルが発生しても変圧器保護を優先させる機構になっております。
2.極低温環境、植物油への対応可能機構
北海道などの極低温環境や植物油等の絶縁媒体が高粘度の状態でも対応可能な安定した切換特性を有した内バネ方式採用の蓄勢機構(特許申請中)と補助駆動装置(特許申請中)を切換開閉器に搭載しております。
3.従来機のOTMRMⅢ 5形のタップ選択器との共用
タップ選択器には従来の信頼性の高いOTMRMⅢ 5形を共用出来るようにし互換性を持たせております。
4.ステップ容量のアップ
ステップ容量は従来のOTMRMⅢ 5形の1100kVAに比べ更に大きい1430kVAまで拡大し、従来以上の高容量領域まで適用できます。
<基本仕様>
型式 | OTVR 5形(新発売品) | OTMRMⅢ 5形(現行品) | |
---|---|---|---|
切換方式 | 真空バルブ式 | 油中アーク式 | |
適用 | 三相星形中性点切換 | 三相星形中性点切換 | |
絶縁強度 | 中性点:70号、100号 | 中性点:30~200号 | |
ステップ電圧 | 2600V | 2000V, 2750V | |
通過電流 | 550A | 550A, 400A | |
ステップ容量 | 1430kVA | 1100kVA | |
タップ点数 | 最大35点 | 最大35点 | |
定格周波数 | 50/60Hz | 50/60Hz | |
機械的耐用切換回数※ | 80万回 | 80万回 | |
電気的耐用切換回数※ | 20万回 | 20万回 | |
短時間耐電流強度 | 熱的 | 5500A(実効値) 2秒間 | |
機械的 | 2.55×5500A(初期波高値) | ||
耐油密 | 0.03MPa | ||
適用電動操作機構 | MM-4形 |
※JEC2220に準拠