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電力機器Q&A 使い方・構造

Q28. 変圧器の並列運転を行う場合、どのようなことに注意すればいいですか?

1.一般に次の条件を満たす2台またはそれ以上の変圧器は、一次及び二次側でそれぞれ同一記号の端子を接続することにより、平行運転することができます。
1. 定格電圧が一次及び二次側とも等しい。
2. 角変位が等しい。(三相の場合)
3. 極性が等しい。(単相の場合)
4. 百分率インピーダンス電圧が等しい。
5. インピーダンスのリアクタンス分と抵抗分の比が等しい。
6. 定格容量の比が1:3以内である。

2.1項の条件が満たされない場合
1. 負荷の配分が経済的でなくなる。
2. 循環電流が変圧器の一次及び二次巻線に流れる。このため効率が下がったり、変圧器の有する能力を充分に発揮することができなくなる。

3.変圧比・インピーダンス電圧及び容量比が1項の条件から多少はずれる場合でも負荷分担及び温度上昇を検討して、それが許容できる範囲内であれば平行運転が可能です。
一般に、次のような場合は平行運転しても支障ないものとしています。
1. すべての変圧器の定格容量の和に相当した負荷をかけた場合、変圧器のいずれかにその定格容量の110%を超えない負荷がかかる場合。
2. 無負荷時の循環電流が小さい容量の変圧器の定格電流値の10%以下の場合。
3. 循環電流と負荷電流との算術和が定格電流値の110%以下の場合。

4.平行運転の電流の配分及び循環電流の求め方について
1. インピーダンスが等しく、巻数比が異なる2台の変圧器が並列に接続された場合、一次、二次両巻線に循環電流が流れます。この場合の循環電流の値は次式で与えられます。

ただし、%Ic':(kVA)'容量の変圧器定格電流の%で表した循環電流値
%IR',%IX':(kVA)'変圧器の%抵抗電圧及び%リアクタンス電圧
%IR'',%IX'':(kVA)''変圧器の%抵抗電圧及び%リアクタンス電圧
k:(kVA)'/(kVA)''
%e:常規変圧比の%で表した電圧比の差

式(1)は実用的には次式で充分間に合い、両方の変圧器の抵抗とリアクタンスの比が同じである場合には正しい値を示します。

一例として2つの同じ変圧器があって、たまたまタップ接続を間違え、お互いの間に2.5%の電圧差があった場合には、変圧器のインピーダンスを5%とすれば

すなわち、この場合の循環電流は定格電流の25%となります。
この例でもお分かりように、かなり低い電圧比の差異に対しても相当に大きい循環電流が流れることになるため注意が必要です。

2. 巻数比が等しくインピーダンスが異なる場合
各変圧器の抵抗とリアクタンスの比が等しい時、両変圧器の電流はそのインピーダンスに逆比例して流れます。また各変圧器の巻線の抵抗がリアクタンスに比してかなり小さい時には、各変圧器のリアクタンスに逆比例して流れます。一般の電力用変圧器では抵抗がリアクタンスに比してかなり小さいので、実用上はこの計算で間に合いますが、抵抗がリアクタンスと同じ程度の大きさの場合には図1に示す図式解法によるか、または次の計算式によって求めます。

ただし、Z1、Z2、R1、R2、X1、X2 は各変圧器のインピーダンス、抵抗、リアクタンスを示します。
定格 kVAが等しい場合には、R1、X1の代わりにそれぞれ%IR1、%IX1を使用して計算できますが、定格kVAが異なる場合には

を使用します。
負荷の大きさ、力率が変わっても両変圧器の負荷は上記関係式を満足するように配分されます。平行運転される2台の変圧器のインピーダンスが大幅に異なる場合、インピーダンスの小さいほうの変圧器に直列にリアクトルを接続してインピーダンスを合わせれば負荷配分を各変圧器の容量比にすることができます。

参考文献:日刊工業新聞社発行「変圧器」