ホーム>製品情報>電力機器>電力機器Q&A>使い方・構造>Q26. 定格周波数60Hzにて設計製作された変圧器を50Hzにて使用した場合の問題点について

電力機器Q&A 使い方・構造

Q26. 定格周波数60Hzにて設計製作された変圧器を50Hzにて使用した場合の問題点について

1.磁束密度および励磁電流と鉄損について
変圧器の誘起電圧Eは
E=√2・π・f・n・φm
ただしf:周波数、n:巻数、φm:磁束
で表されます。
今、60Hz用に設計された変圧器を50Hzの同電圧値で使用する場合、60Hzの磁束φ60、50Hzの磁束をφ50とすると

ゆえに50Hzで使用する場合磁束は120%になり、ちょうど120%の過電圧を受けた場合と等しくなるため、鉄心が飽和状態近くに達して出力電圧に歪が生じます。 その結果励磁電流が著しく増大し、鉄損および騒音も増大します。
一般に使われている方向性けい素鋼帯では、常用磁束密度の範囲において励磁電流実効値は磁束密度の7~10乗に、鉄損は2~3乗に比例するので、励磁電流は3.6~6.4倍、鉄損は1.4~1.7倍程度になるものと思われますが、実際には鉄心が飽和値近くに達するのでより大きな値になるものと思われます。

2. 負荷損について
負荷損WCは抵抗損と漂遊負荷損とからなります。

ただし
I1、I2 :一次、二次定格電流
R1、R2:一次、二次巻線抵抗
WS:漂遊負荷損
で表されます。
この式から分かるように、抵抗損は電流の2乗と抵抗の積で決まり、周波数には無関係です。また、漂遊損は周波数の2乗に比例するが値が小さいので、全体的な負荷損はほぼ変わりません。

3. インピーダンス電圧および電圧変動率について
%インビーダンス電圧Zは

で表せます。
前述の通り抵抗は周波数の影響を受けませんが、リアクタンスは周波数に比例するので、Q50=Q60 X 1/1.2となり%インピーダンスは

と60Hzの時より小さくなります。
また、電圧変動率は上記のように50Hz使用時%インピーダンスが小さくなるのでわずかに良くなります。

4. 結論
60Hzの変圧器を50Hzで使用すると
1. 励磁電流、騒音が増大する。
2. 鉄損が増大する。
3. インピーダンス、電圧変動率は小さくなる。
変圧器の油の温度上昇値は負荷を低減する事で対応可能ですが、1の問題の解決にはならず、また内部故障に波及する可能性もあるため、60Hz用の変圧器を50Hzで使用することはお勧めできません。

関連リンク

使い方・構造について