ニュースリリース・お知らせ 2017年度

■要旨

株式会社ダイヘン（本社：大阪市、取締役社長：田尻哲也）は、世界初の新技術である、高電流域の炭酸ガスアーク溶接における埋もれアークの安定化制御技術を搭載した、高能率アーク溶接システム「D-Arc」を5月29日より販売開始いたします。

最大溶接電流650Aによる埋もれアークの深い溶け込み特性により、最大板厚19mm鋼板の１パス溶接が可能となり、従来の溶接法では多層溶接が必要とされていた建築や鉄骨などの大型構造物や建設機械、造船などの溶接に、高能率化と高品質化を実現します。

■開発の背景

一般的な炭酸ガスアーク溶接では、材料の表面から加熱するため溶け込み深さは数mm程度であり、厚板の溶接を行う際には溶接部に開先加工を施し、溶接を何層も重ねることによって開先加工部を充填する必要があります。そのため、開先加工と溶接が長時間におよぶほか、溶接の熱による変形が発生するなど、多くの課題があります。

また、一般的に溶接の作業効率を高めるために必要とされている大電流溶接、なかでも500A以上の炭酸ガスアーク溶接ではアーク現象が非常に不安定になるため、溶接欠陥の発生や溶接外観にも悪影響をおよぼすなどの課題があり、従来の技術では実用化が困難とされてきました。

そこで、これらの課題を解決するべく、当社は大阪大学接合科学研究所と共同で、溶接電流500A以上の炭酸ガスアーク現象の解析を実施し、当社のデジタルインバータ制御式溶接機により、世界初となる溶接電流500A以上の炭酸ガスアーク溶接の安定化制御に成功しました。

2016年4月に開催された国際ウェルディングショーに出展し、従来の溶接技術の常識を覆す画期的な製品として注目を浴びましたが、その後、実用化に向けた製品開発ならびに実際のお客様の生産現場にてフィールドテストを実施し、この度、高能率アーク溶接システム「D-Arc」として販売を開始いたします。

■主な特長

最大板厚19mm鋼板の1パス溶接が可能となることで溶接工程の短縮を実現します。また、溶接前工程、溶接後工程においても工程の短縮が可能で、生産コスト85%削減が可能となり、厚板溶接の生産効率が飛躍的に向上します。

1. 溶接時間とシールドガス消費量を最大80%削減
   最大電流650Aによる埋もれアークの深い溶け込み特性により、従来は完成までに同じ個所を複数回溶接することが必要であった厚板も、最大板厚19mmの鋼板を1回の溶接で完成させることができるため、溶接時間は最大80%削減可能となります。またシールドガスの消費量も同様に最大80%削減します。
2. 開先断面積およびワイヤ消費量最大70%削減
   厚板溶接を行う際に必要な開先の加工面積を最大70%削減することで、開先加工時間を大幅に短縮するとともに、溶接ワイヤの使用量も最大70%削減されます。これにより溶接ワイヤのランニングコスト低減を実現します。
3. 溶接時に発生する変形量を最大85%低減
   溶接が完成するまでの回数が大幅に減るため、溶接材料に投入される熱量が大幅に低減します。これにより溶接構造物の熱による変形が少なくなり、溶接後に行う変形の修正作業時間が短縮されます。

■主な製品構成

• D-Arc専用溶接電源（WB-DPS）
  2台並列運転により、最大溶接電流650A、使用率100%の溶接が可能
• 高速ワイヤ送給システム（プッシュ送給装置：DF-PS、プル送給装置：DF-PL）
  プッシュ－プル送給システムを採用し、最大ワイヤ送給速度30m／分の高速安定送給を実現
• 溶接トーチ（RTWH6500S）
  ダイヘン独自の銅合金3D造形技術により冷却水流路を最適化。最大溶接電流650A、使用率100%ながらも、コンパクト化を実現
  ※ロボットシステムや自動機への搭載が可能となっています。

■販売計画

■実機のご見学

当社六甲事業所にて、ご覧いただけます。

■製品に関するお問い合わせ先

株式会社ダイヘン　溶接機事業部　企画部
TEL：078-275-2005　FAX：078-845-8199